これまでに何度か語学学習関連の記事を書いてきた。
今回は、3000時間くらい投資した英語力習得の過程において、自分自身の後悔というか、反省点を踏まえて、もっと早くからアウトプットを始めていれば、もっと効率的に英語力を身に付けることが出来ただろうということについて、その理由を書くことにする。
※実は今も全然英語ダメですでは説得力がないので、確認だが、これを書いている本人は、現在は海外で英語でビジネスモデルをピッチして、ファイナリストに選ばれたことがあるし、シンガポールのビジネススクールも卒業しているし、海外でビジネスをする上で支障がないくらいのレベルにはなっている。
過去に書いた語学関連の記事はこちら。
2 自己投資と語学試験(TOEICやTOEFL)無くして英語学習は成らず
自分は、タイトルの通り、もっと早くアウトプット力強化に手をつければよかったと反省している。
逆に言えば、英語学習において、(大学時代など、もっと早くからやっておけば良かったという根本的な点を除いて)反省しているのはこれだけだ。
それくらい、これは英語学習にとって重要な点なのだと信じて疑わない。
ここで言う英語(語学)学習はインプットとアウトプットに整理すると、当前だが以下のようになる。
インプット: リーディング・リスニング
アウトプット: ライティング・スピーキング
ほとんどの英語学習者はインプット力の強化から始めているはずだ。
そもそも日本の大学受験ではインプット力が重要視されているのは言わずもがなだ。
(最近は徐々にアウトプット力も重視されてきているらしいが、全然足りない。)
新型のTOEICであるTOEIC SWも出てきているがまだ受験者は少数であり、基本的にTOEIC受験者はインプット力を図る問題しか解いていない。
このように自分も2008年に英語学習を開始する際、(このことを大きく反省しているのだが)、インプット力の強化から始めた。
単語帳を徹底的にやり、海外のメディアを読んでみたり、会社の補助があったアルクのリスニング教材などに取り組み始めた。
アウトプット力強化については、(当時TOEICは300点台だったので)、ある程度のレベル(TOEIC600点~700点)まで到達してから始めようと思っていた。
でも、今だから間違いなく言える。
絶対に、一刻も早くアウトプットを始めるべきだ。
その理由は3点だ。以下に一つずつ解説していきたい。
1.アウトプット力強化はインプット力強化に比べて圧倒的に時間がかかる
語学学習に取組まれたことがある人なら誰でも同意されると思うが、
アウトプット力を高めることの方がインプット力を身につけるよりも圧倒的に時間がかかる。
当然のように、 アウトプット力習得力時間>インプット力習得時間 という関係になる。
そもそも、インプット力強化は“一人”で“直ぐに”“どこでも”出来るので、何かしらの教材さえ用意してあれば、誰もが思い立った時に取り組む事ができる。
カバンから単語帳を出して暗記するのも、文法のテキストを出して読むのも、モバイルで海外メディアにアクセスしリーディングするのも、Podcastでリスニングするのも全て瞬時に出来る。
しかし、アウトプットに関しては“一人”で“直ぐに”“どこでも”というわけにはいかない。
もちろん、海外の英語ネイティブの友人とemailでやり取りしたり、FacebookやスカイプやWhat’s upなどでのチャットなら今すぐ出来るかもしれない。しかし、これは英語学習者全員に当てはまるやり方ではない。
というより、英語を学んでいる初期の段階で、そもそも英語でやりとりする友人がいることはほとんどないと言ってもよいだろう。
一方で、もちろん英語でブログやツイッターなどをするということは可能だろう。
このようなアウトプットをサポートする有名なサービスも、この数年でどんどん立ち上がってきて規模も拡大している。例えば、ヤンヤンさんが運営するLang-8などを使って英語で日記を書き、英語ネイティブに修正してもらうのも非常に有効だろう。
このように、まだまだ多くの人が出来ているわけではないが、アウトプットのライティングにおいては、比較的“一人”で“直ぐに”“どこでも”というニーズを満たすツールがそろってきている。
しかし、アウトプットのスピーキングは、従来通りだ。
95%以上の英語学習者において、このスピーキングが最も大きな課題になるであろう。
ほとんど人達がスピーキングのトレーニングのために英会話学校に通ったり、格安のスカイプ英会話等を行う。
これらの場合、だいたいが時間なり場所が決まっていることが多い。
このように、(英語圏の国に暮らしているわけでもない限り)、意識してアウトプットをやろうとした場合でさえ、そう簡単には時間を取れない。
結果として英語の学習時間は、インプットの時間が大半になってしまう。(インプットとアウトプットと分けて勉強時間を記録してみると驚くほど明白になる)
おそらく、英語学習の全ての時間をアウトプットのために使おうと意識しても、意識し過ぎではない。
それくらい、インプットの方の時間になってしまう。
ただ単純に、時間が取りにくという話ではない。
アウトプット力を強化するために、最も重要なことは、英語での瞬発力を上げること。
このように自分は考えている。
この瞬発力を上げるのが物凄く大変な作業で、時間がかかる作業なのだ。
例えば、「What do you think about new design of Facebook」という音が聞こえて、それを「フェイスブックの新しいデザインについてどう思う?」という意味として解釈し、それに対する反応を考え、「It’s quite cool because…」と答えるまでの瞬発力。
英語学習初級者~中級者までの間は、
英語で聞き⇒日本語の意味に訳し意味を理解し⇒日本語で回答を考え英語に直し⇒英語で回答する。
ただ、これが中級者~上級者になると、
英語で聞き⇒英語で理解し⇒英語で回答を考え⇒英語で回答する。
このように、全て英語で完結出きるようになってくる。
つまり、我々が、普段日本語で行っているプロセスと一緒だ。
我々は、日本語で聞こえて、そのまま日本語で理解し、日本語で意見を整理し、日本語で答えいるのだから。
この瞬発力を上げるには、早くから何度も何度もやり続ける以外に道はない。
英単語や文章表現を沢山知っているということ事態は、あくまでも、この瞬発力のサポートでしかなくて、その瞬発力自体は反復からしか強化されない。
実はこれは、“自分はそれなりに話すのが上手いと思っていた”ような学生が、社会人になり、ビジネス会話になると、途端にシドロモドロになる状況とあまり変わらない。ビジネスで出てくる言葉や、ビジネスならではの敬語や丁寧語を混ぜながら話すということに対して瞬発力が鍛えられていないだけなのだ。
ここで、自分自身のケースを例に説明してみたい。
自分はマクロ経済とミクロ経済の違いも分からずに金融業界に入社した。
最初の数ヶ月は、(自分はそれなりに話すのは得意な方だと思っていたが)ぺらぺらと話すことすらできなくなった。もちろん、日本語で話しているのに関わらずだ。
金融業界での顧客との会話は例えば以下のようなものだ。
「本日のお昼に日銀は量的緩和を行うと市場では予想されております。」
「確かに魅力的な商品の条件に見えますが、このボラティリティーを計算するとオプションの組み合わせた商品で非常にリスクが高い事が伺えます」
「先日、米国で雇用統計が発表されて市場予想を大きく下回り、NYダウは150ポイント下落しました。」
などなど。
こんな会話を学生時代にほぼ間違いなく使ったことはない。
このような言葉を会話のあちこちで使わなければならない。
だから、このような経済用語・ビジネス用語・敬語に関する瞬発力はゼロに等しい。
結果として、よく噛んだり、会話がぎこちない。
これらは、英語学習におけるアウトプット力の習得と非常に似ていると自分は考えている。
経験のない人間にとって、ビジネス用語も経済用語も敬語も、ある意味、違う国の言語を使っているようなものなのだ。
しかし、何ヶ月か経ってみると、そのような言葉を使いこなしている自分に気づく。
一年も二年も経てば、当時シドロモドロだったビジネス会話も自信を持って、スラスラと会話しているだろう。
これは、仕事を通じて、徹底して反復してきたからだ。つまり、何度も繰り返したから、反復したからだ。
瞬発力を上げるには、この反復することにしか方法はない。
にもかかわらず、最も瞬発力が重要になるスピーキング力を鍛える機会を、日本にいて多く取ることは難しい。だからこそ、最も時間がかかる。
だからこそ、一刻も早く始めるべきだと自分は考える。
2.インプットとの相乗効果が起きやすい
そもそも、アウトプットはアウトプットのためだけのものではない。
インプット力を強化したい場合でも、アウトプットのことを意識してインプットをすると圧倒的に効率が高まるようになるはずだ。
ただ、この逆であるインプットのことを意識してアウトプットをすると圧倒的に効率が高まることはあまり起こらない。
そもそもコミュニケーションのプロセスは、
リーティング or リスニング
↓
理解する
↓
ライティング or スピーキング
というのが基本だ。
もちろん、リーティング・リスニングで完結するシーンというのは多いが、
(本を読む、テレビを見る、講義を聞くなど完結するケースが多い)
ライティング・スピーキングで完結するシーンはあまりない。
(独り言だったり、ブログやソーシャルメディアでの一方的な発信(書く)やプレゼンテーション(話す)などくらいだろう。ただインプットと比べると圧倒的に少ない)
我々が行っている行為で最も多いのは、
「メールを読み、返事を書く」
「資料を読み(調べ)、話す(提案する)」
「他人の意見を聞き、自分の意見を話す」
などといった行為である。
これらの点において、全てインプットから始まり最終的にアウトプットに終わる。
だからこそ、最終的なアウトプットを意識しないでインプットをすると、インプットのためのインプット学習となりモチベーションも効率も半分になる。
英語学習者なら、誰でもこんな経験があるはずだ。
英文を読んでいる最中に、「このフレーズいいな、今後英語の先生との会話で使ってみよう」
映画を見ている最中などに、「このセリフ、今度使ってみよう」
メールを読んでいる時に、「こういったシーンでは、こういった言い回しが出来るんだ」
資料を読んでいる際に、「この英語の図と英語の解説文いいな、これを今度パワポに引用しよう」 などなど。
こうなると、一層インプットが楽しくなるし、そもそもインプットがそのままアウトプットに繋がっているので非常に効率的な状態となる。
だからこそ、一刻も早く、アウトプットのためのインプット学習に変える必要がある。
そこに大きな相乗効果が生まれるからだ。
そのためにアウトプットを普段からしている環境が必要となる。
だからこそ、一刻も早くアウトプットを始めるべきなのだ。
3.英語学習全体のモチベーションが高まりやすい
これは、2で説明した相乗効果にも近い話なのだが、
アウトプットのことを意識してインプットをすると、
インプットのモチベーションもアウトプットのモチベーションも断然上がるようになる。
誰もが経験したことはあると思うが、英語学習で最も嬉しい・楽しいと感じる瞬間は読めたとか聞けたとか書けたというよりも、“うまく話すことが出来た”瞬間だ。
つまり、意思疎通が出来たりして、かつ相手の笑いを取ったりと共感を得た時にはこれ以上最高に気持ちいいことはない。
逆に、すぐに表現が出てこなかったりした時に、すぐ調べたくなるし、次は絶対に伝えたいと当然思うようになる。
特に、「何で自分はこんな簡単な表現すら伝えられない(かった)のだろう。。。」「みんなの前でうまく話せずに恥じかいた(悔しかった)」とか、そういった時の悔しさが英語学習の大きな糧になることが多い。
英語力を短期間で習得した人達の多くが口を揃えて言うことがある。
「何度も恥をかいたから悔しくて英語を頑張った」ということ。
実際に自分自身の経験に当てはめても同じだ。
日本でも、英語ネイティブたちとMTGして、発音を聞き取ってもらえなかったり、うまく伝えられなくて首をかしげられたり、準備してきたはずの話すべき内容が直前で全部飛んだり。。。
そして、海外に行ってからは、ビジネススクールの授業中に発言したり、みんなの前でプレゼンしたり、パネラーとして招かれたイベントでスピーチしたり、ビジネスでは社内でプレゼンしたり、顧客にプレゼンしたり、何度も何度も恥をかき、悔しい思いをした。
正直言って一番悔しかったのは、マレーシア人の同僚の5歳の子ども(シンガポール国籍で英語も中国語も流暢)に、「Pardon?」「Sorry?」を何度も繰り返された時だ。
幼児は本当に正直だった。海外に出て間もない頃の自分の拙い発音では通じなかった。
こういった経験を頻繁に出来るのは、もちろん英語圏の国に住むことなのだが、今はスカイプ英会話も英会話学校も増えたし、コストも劇的に下がったはずなので、そういった機会に出会えることは圧倒的に増えているはずだ。
アウトプット力を意識して、学習を進めることは、英語学習者のそもそものモチベーションのはずだ。
なぜなら、英語学習者の9割以上のモチベーションは、英語の文章を読みたいとか、英語を聞きたいではなく、それが旅行レベルなのか、留学レベルなのか、ビジネスレベルなのかは別として、海外の人たちとコミュニケーションを取ることであるはずだから。
それなら、そのモチベーションの最も近い部分から始めた方がいいに決まっている。
そこで、自分に足りない部分が見える、それを補完するためにインプットを続ける。
その中で、少なくとも覚えたことだけでも話せるようになってくると物凄い楽しくなってくる。
「自己紹介だけは完全に暗記したから、どこでも話せる」とでもなったら、後は本当に楽しい世界が待っている。その自己紹介を通じて、相手は間違いなくあなたに関心を持ち、色々質問をしてくるはずだから。
そうなると、使えるフレーズが増えていき、英語で話せる話題が広がっていき、それらの表現を応用して、色々なケースに転用できるはずだ。
そうやって、英語上級者に近づいていく。
そのために、何度も繰り返すが、一刻もアウトプットから始めた方がいいというのが自分自身の後悔を通じた結論だ。
【最後に】
英語学習を具体的にどうやったらいいかは、また別に書くとしますが、アウトプットに関して、簡単にコメントしておきます。
ライティングに関しては、
上記しましたが、Lang8などが良さそうです。
(※確認:ステマではありません。)
外国人とコミュニケーションを取りながら、無料で添削してくれるなんて、こんな最高な環境はないですよね。
スピーキングについては、
レアジョブやラングリッチといったスカイプでのフィリピン英会話がいいと思います。
“格安”なのは、まだ英語力がそれなりのレベルに達していない時点では特に最高だと思います。
「まだ高いお金を払って、通うほどではない」と思うからですし、確かに全員ビジネス経験がある講師を揃えているべルリッツなどはまだ必要がないかもしれません。
理由1の瞬発力という点では、一週間も続けてほぼ英語だけの環境にいると、脳が新しい環境に対応しようとして、瞬発力の刺激は非常に高まります。ある意味、人間の身体が体内に侵入しようとする新しいウイルスに対して免疫力をつけるのと似ていると思います。
ただ、自分に負荷をかけたい場合は、値段の高い英会話学校に通うのもいいでしょう。
それは自分自身のモチベーションや学習の進捗状況を見ながら行うがよいかと思います。
参考:自己投資と語学試験(TOEICやTOEFL)無くして英語学習は成らず
長々と書いてきましたが、今後、語学学習について、まだまだ書いていきます。
そうは言っても色々工夫しながら3000時間くらい取り組みましたので、少しくらいお役に立てればと。
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