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野村證券1千人に読んで頂いたラストメッセージ『入社以来、自分自身が感じてきたこと、大切にしてきたこと』

下記は2009年11月末に、新卒で配属された野村證券荻窪支店から本社プライベートバンクへの転勤の際、当時の副社長(現会長)以下役員らや全国の営業店に転勤挨拶とともに送ったメールの中身です。

(追記:その後、社長にまで読んで頂くチャンスを頂いたもので、かつその後の若手育成のバイブルとして受け継いで頂いているそうです。)

自分自身の経験が役に立てばと、入社以来、自分自身が感じてきたこと、大切にしてきたことなど、簡単にアウトプットしてみました

金融機関の営業店でファイナンシャルコンサルタントとしての新規開拓営業から始まり、ウェルスマネージャーに昇進していく話なので理解し辛いかもしれないけど、業界問わず共通点は多いと思います。よろしければ読んでみてください。

 

(以下原文)

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『入社以来、自分自身が感じてきたこと、大切にしてきたこと』  2009年 11月30日 野村證券荻窪支店 冨田和成

1.フレームワークの洗練

2.タイム&モチベーション管理

3.徹底したインプット

 

入社以来、自分自身が感じてきたこと、大切にしてきたことなど、簡単にアウトプットしてみました。

当社の最大人口分布ゾーンである若手の育成などの一助にでもなれば光栄です。

 

 

■自分自身を振り返って


自分自身の1年目2年目は、モヤモヤを感じる時間すら自分に与えないよう、とにかくガムシャラに走り続けたというのが実際だと思います。

朝は、誰よりも早く6時半前には出社し、暗くなっても新規開拓営業を続け、退社も誰よりも遅く。

帰ってからも、深夜1~2時頃までは徹底したインプット・ネットワーク構築・日々の詳細な行動管理などに費やしました。

また週末は更に加速し、毎週末20時間以上は大量のインプットや振り返りなどの時間を確保しました。

何度も壁にぶつかりましたが、常に改善をしながら突き進み続け、目標に近い結果を得ることができました。

この2年間が、自分にとって特に重要かつ貴重な期間になりました。

この時期の成長が営業マンとしての最低限の型を作ったと思います。

自分としてはだいぶストックを貯めることができたように思います。

逆に言えば、残りの2年弱は、ここでのストックを運用した期間でした。

私が入社した2006年はライブドアや中央青山事件を始めとする新興市場ショック、2007年にヘッジファンド資金凍結したパリパショック、そして昨年リーマンショックと非常に相場変動の高いマーケット期間でした。

その過程でメインでビジネスをさせて頂く大手顧客が相場変動により変遷していくのも経験しました。

また社内に視点を変えると、相場変動の中でお客様をマネジメントしきれずに、特に若い世代で結果を出していた上位ランキングのメンバーがガラッと入れ替わっていくのも目の当たりにしました。

おそらく常にランキングトップ数番にいるメンバーというのは、ほんの数人だったと思います。

私自身も、常にトップを走り続けることの難しさも体験しました。

しかし、そんな自分を支えたのは、入社1年目、富裕層の新規開拓を一年で200件以上行い、数十億円を集めた中で培った「新規開拓への絶対的な自信と信頼」だったと思います。

「迷ったのなら新規開拓」とココロに言い聞かせ、3年目になっても暑い中寒い中関わらず上場企業やその創業者など、超大手の開拓に周っていたことを昨日のことのように思い出せます。

その時期、その時期で、ビジネスをさせて頂いていた大手顧客が変遷したのは新規開拓のお陰以外の何ものでもありませんでした。

3年目4年目というのは自分にとって、仕事へのコミットの仕方を大きく変えた期間でした。

それは「超大手の開拓」と「留学のための語学力向上」。

つまり「基礎から応用へ」、「将来へ向けて」がキーワードでした。

1年目2年目とは違く、量をたくさんやるというやり方ではなく、質にこだわった自分の実力からすれば1ステップどころでなく、3ステップ上くらいの高みを目指した挑戦時期でもありました。

結果として、リーマンショックでそれまでの大手顧客とのビジネスが縮小してしまった中で、この期間で開拓した超優良先がその後の自分のビジネス基盤を支えて頂きました。

また、英語に関しては、特に強化し始めた昨年秋以降より現在までを計算すると勉強投資時間は1500時間以上にもなり、人事部の方々にも笑われていた英語の点数(TOEIC300点台)も一気に飛躍し、来年夏からシンガポールへのビジネススクールへの留学の機会を頂けた最低限レベルにはなりました。

ただ、この生活は上司の方々始め、周囲の理解があったからできたことであり、3年目以降は、早めに退社させて頂いておりました。

温かく語学勉強を見守って頂いた周囲の方々に改めて感謝しなければと思います。

心より御礼申し上げます。4年弱の期間を大きく振り返って、トップセールスや1万人の営業がいる会社で、会社史上最年少記録を樹立できたことなど、想像以上の結果と成長が得られたことに感謝し、また達成感のある自分がいます。

今週、お客様へのご挨拶に周らせて頂く中で、こみ上げてくるものが多々ありました。

自分を支えて頂いたお客様に何よりも感謝していますし、いつの日か自分自身の力でここまで成長してきたと思っている自分がいました。

しかしそれは全く違いました。本当にお客様に成長させてもらったんだなと、また支店での生活を振り返っても周囲の方々の温かい眼差しに支えられ伸び伸びとチャレンジさせてもらえたのだなと痛感しました。

 

このような感謝すべき結果と成長を出す中で大切にしてきたことが3つあります。

 

 

■大切にしてきたこと その1:フレームワークの洗練


人はそれぞれ「こうやればできるというプロセス」つまり「自分なりの成功法」を持っている。

 

例えると料理でいえば“レシピ”である。

おいしい料理という結果を得るために、またその結果を再現するためにレシピを作る。

これらは勝間和代さん的に言えば「フレームワーク」というものだ。

 

こだわっていたのは「再現性のある結果」。

つまり、一度成功が起こったとしても、また起こせなければそれは“まぐれ”“一発屋”で終わってしまう。

営業マンとしては何度も成功を再現できる必要があり、理想的な像だ。

そのために成功体験や失敗体験の具体的な事象を徹底して分析した

分析して、形にしたものがフレームワークであり、これを繰り返すことにより徹底して洗練していった

 

例えば、新規の超富裕層顧客との面談依頼のための巻紙(※筆ペンで手紙を書き、顧客にサプライズを起こす営業手法として使用している。)を例に挙げてみたい。

こんな話を聞いたことがある、

それは

「面談依頼の巻紙を書き続けていたら社長から電話がかかってきて取引してくれた」

「2メートルくらいの超長文の巻紙を書いたら相手の社内でも有名になり、今まで断られていた受付が通してくれた」

などと。

この成功体験をした人間は、おそらくこの成功体験をそのまま受け取り、またこの結果が再現性のあるものだと思い込み、このやり方をやり続けるだろう。

もしそうなれば結果は悲惨になるような気がする。

つまり、これはフレームワークにならずに、具体的事象しか見ていない例だ。

そうではなくて、ここでしなければいけないは、この具体的事象を抽象化するための“帰納法”だ。

つまり、

「なぜ社長は電話をくれたのか?」「なぜ受付は通したのか?」という裏にある部分が重要で、

おそらく社長は

「こいつくらい“本気”なら“熱心”なら一回見てみたい」

とか

「俺のためにこんなに頑張ってくれた」とか思ってるのであり、

受付が通したのも同じく「この人は頑張ってる人だから特別に社長に時間あるか聞いてあげよう」とかであろう。

つまり相手が食いついたのは、

「そんな巻紙作戦なんてしてくる奴はいない」という“意外性”(サプライズ)の中に“熱意”を感じたのであり、その熱意に“可能性”を感じたという分析ができる。

当たり前のようだが、ここまで抽象化(帰納)できたら、今度は演繹法にシフトし、

「相手に可能性を感じてもらうためには?」

「相手に熱意を感じてもらうには?」

「相手にサプライズをおこすには?」

という問いから、巻紙という一通りででない、その他多くの行動選択肢が生まれることになる。

 

例を挙げるなら

「社長の本業分野に関わる最新の本を5冊でも読んでレポートにまとめて送る」

とか

「中小企業実態基本調査を使って、相手の自己資本比率とか従業員売上比率とか業界平均と比べて計算してあげる」

など無限に新しい選択肢が沸いてくる。

つまり、 成功体験や失敗体験の個々の具体的事例を分析して、その上にあるポイントを抽出する、抽出した抽象的ポイントをもう一度具体的行動に落とす、そして行動するという流れだ。

この抽象的ポイントをまとめたり、分類したものがフレームワークだ。

 

例を挙げると、

私は「(新規開拓などの)成果=×質」と考えており、

これを因数分解すると「開拓成果=(モチマネ+タイマネ+ツール)×(学習+PDCA)」であり、

このように因数分解を続けていった結果、

「本を毎月30冊以上読む」や「ターゲット起業へ業界情報を毎週送る」

などという行動レベルに落とし込まれることになる。

洗練されたフレームワークから落とし込む行動なので非常に効率が高くなると考える。

 

これらのフレームワークを洗練、構築する上で重要なのが、日々のPDCAとHDCAである。

PDCAはPlan⇒Do⇒Check⇒Action、
HDCAはHypothesis(仮説)⇒Do⇒Check⇒Actionである。

これを日・週・月・4半期・年ベースで続けてきた。

やればやるほど、最初のPlanやHypothesisの時点で質が高くなるし、最短距離を設定できるようになる。

どんなに飲んだり疲れて帰った日でもこれを続けてきた。

 

 

■大切にしてきたこと その2:タイム&モチベーション管理


常に以下のことを明確にし、定期的に修正し続けた。

明確にゴール(目的地)を決め、

そこまでの経路を決定し、

そのロードを前に進むための手段を設定する。

目的地→目的&目標であり、経路→戦略であり、手段→詳細なTODOである。

人が目標達成へ向けて不安になる時というのは、

必ず「今やってることって本当に正しいのか?」

つまり

「目的地へ本当に近づいているのか?」と疑問に思うときである。

そもそも、まず進むべきゴールが明確になってなければ、北に行けばいいのか、東なのか、南なのか、

例えるなら今から北海道まで行こうか沖縄に行こうかによって当然経路も手段は全く変わる。

目的地が北海道と決まっている人でも、九州を通る経路を設定したり、経路を見失って誤った手段で進むと、大きな時間のロスとなる。

また、ゴールは明確だったとしても、そこまで辿り着くための経路を知らなければ、また手段である乗り物のレベルを上げれなければたどり着くまでのスピードは遅い。

歩きから走り、走りから自転車、自転車から車、車から各駅停車、各駅停車から新幹線、そして飛行機と。

だから時に、飛行機に乗るために目的地から逆走して方向とは逆に進んで羽田や成田を目指すこともあるし、それに乗れるための資金やスキルなどを身につける必要もでてくる。

 

例えば、「毎日30分だけ早く退社し財務分析の勉強をする」をすると実際の業務時間が減ってしまうしエネルギーも消費するので一見逆走してしまう。

だが、その知識を使って経営者や経理担当者と話をすれば新規開拓率も成約率は上がる。

今まで走りだった交通手段から自転車に乗り換えられたかもしれない。

このあたりのことが常に明確になっていれば、時間も行動も効率的であり、また「今やってることは正しい」という自信があるので、モチベーションも高くいられる。

先ほども記した通り、人が不安になる(モチベーションを落とす)のは

「今やってることって本当に正しいのか?」、

つまり「目的地へ本当に近づいているのか?」と疑問に思うときであるからだ。

 

 

■大切にしてきたこと その3:徹底したインプット


とにかく徹底してインプットを続けました。

社内のネットに膨大に保存されてる社内資料は営業に関する所は全て目を通しました。

特に1年目2年目は、日々何十種類アップデートされる経済や企業レポートですら全てといっていいくらい読み尽くしました。

雑誌は日経ビジネス・日経アソシエ・エコノミスト・ダイヤモンド・東洋経済・プレジデント・日経WOMAN・Economist・Newsweek等の全てを2年目以降は読み続け、

また、本は月に20~30冊をビジネス本中心に入社以来ずっと読み続けました。

 

加えて、社内外のネットワークからは本当にいろいろなことを学ばせて頂きました。

営業に関することで言えば、いろんな裏技系といいますか、営業テクニックを。

例えば、営業マンなら誰もが知るという伝説の営業マンからは、

「いつも受付でかわされる先に対して代表電話の番号を1つや2つズラして他部署に繋がせる」ためのテクニックなど有効な手段を教えて頂きました。

実際にいつも受付に電話してもラチがあかなかった対象先に実践したところ、何件か社長にまでたどり着くことができ、うち2件はこのやり方で超大手企業との取引がスタートしたこともありました。

 

また、社内の主要部署からも貴重なテクニックをご教授頂きました。

例えば、法人営業部のスペシャリストからは日経テレコンや有報革命やEDINETなどからの企業情報の抽出方法を教えて頂きました。

帝国データバンクからの情報だけでなく、それらを使うとB/SやP/Lの中身まで見られる。

特にB/S資産の部「投資その他の資産」の中の投資有価証券の欄やP/L営業外収益・損失や特別利益・損失の中の(投資)有価証券売却益or損を参照すれば、企業の運用状況やビジネスの方向性や意図なども一目瞭然になります。

経験値を情報量でカバーするため、極力広い分野に関心を持ちインプットしてきました。

 

レベルの高い経営者ほど、数知れないほどの営業マンがアプローチにきているのであり、レベルの高い担当者が付いている。

逆に言えば、そのレベルを超えられるのであれば、人間力の部分で大きな問題がない限り、必ず相手の気持ちを惹きつけられる。

そのためには、自分の業界分野の話だけで差をつけるのは難しい。

そうであれば、

「社長の知りたい情報を教えてあげれる(もちろん本業の話中心になる)」

とか

「社長のレベルの高い会話の話し相手になれる(政治や趣味の世界など)」ことが差をつけられるポイントになる。

営業マンっぽい営業マンにならずに、多種多様なトークで相手の関心を惹きつけた上で相手から「お前面白いな、っで今は何がいいんだ?」と聞かれるようになるのが理想だと思う。

 

 

■最後に


全国の若手の新規開拓について思うこと。

若手が新規開拓を通じて活き活きと育って欲しい。

採用強化によって得られた人財。

若手が営業店構成人員の半分以上占める今こそ全国がもう一度、新規開拓に向かっていくべきだと思う。

すごく当たり前のことなのだけど、実際全国を揚げてそのような環境になっているか言われると、そうではないように思う。招待頂く各種会議や社内電話で色んな方々と情報交換させてもらったりしている中では、場所にもよると思うがそう思ってしまう。

真の意味での開拓、それを社内の上の方々は心から歓迎する会社であって欲しい。

目の前の結果は欲しい、若手の小さい新規契約も貴重になるほど、我々の環境は厳しいかもしれない、上の方々は若手を理解し、また逆に若手は上の方々を理解しなければいけないと思う。

若手は「3ヶ月で新規顧客100件開拓して収益を月に1000万円頂けるような顧客基盤を作ります」と宣言して出て行って欲しいし、上の方々は信じて見守って指導してあげて欲しい。

若手にそういった気持ちがなければ上の方々は「開拓にいかせてもやる気もないし、結果が薄い」と思ってしまうし、上の方々が開拓を支援する空気じゃないと若手は「日々の数字も出ないし、つめられるから外に出て行けない」と萎縮してしまう。

そういった意味では、支店でお世話になった皆さんは、その開拓を温かく見守ってくれた、感謝の限りです。

自分自身の環境が厳しいときに何度もやって思いました、「新規開拓は絶対に営業マンを裏切ることはない」。

やってる最中はなかなか恐いものだ、目の前の結果が少し減ってしまい、未来の大きな結果を目指して走るのだから。

でも、100%の気持ちでコミットできたのなら結果は必ず出ると思う。

途中で「やはり新規開拓やっても結果が出ないんじゃ?」と動きを止めたのなら結果にはならなくて当然だ。

この会社に採用された時点で必ず全社員が結果の出るポテンシャルを認められている。

結果はいつ出るかは分からない、ただ99%の力まで出なく100%しっかりやり切れたなら必ず結果は出るのではないかと思っている。

そのことを信じて自分自身走り続けたいし、今後も自分と出会った方々に少しでも刺激の与えられる人財になっていきたいと思います。

今後ともご指導ご鞭撻の程、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

以上。

photo credit: Adam Foster | Codefor via photopin cc